脱北女性の韓国での婚活を紹介するテレビを見た感想
先日NHKで韓国に暮らす北朝鮮の脱北女性の婚活についての番組を放送していました。
私自身、最近はテレビを見ることが少なくなってきたのですが、テーマが非常に興味深かったため、思わず最後まで視聴してしまいました。
そもそも、韓国人男性は、北朝鮮の女性に対して、
韓国人女性と比べて金遣いが荒くなく、
男性を立てる、
いわゆる昔ながらの理想の女性像を連想する存在で、
婚活市場で一定の人気があり、専門の婚活サービス業者(もしくは支援団体?)が存在します。
番組の概要
番組では、その婚活サービス利用者の脱北女性にフォーカスする形でストーリーが展開されていました(ちなみにノンフィクション)。
番組では取り上げてはいなかったですが、北朝鮮は美人が多いとも言いますし、
そうしたイメージも人気を後押ししているのかもしれません。
ただ、番組内では、そうしたイメージを押し付けてくるような韓国人男性に対して、
脱北女性が明らかな嫌悪感を示すシーンもありました。
直接、男性に向かって抗議するのではなく、その場は取り繕って、男性が立ち去った後に、私たちにそういうイメージを押し付けるのは時代遅れだ、と主張していました。
とは言いつつも、直接、相手に言わないところが、イメージを醸成する一因になっているのではなかとも思いました。
私が番組を見て一番印象に残ったことは
北朝鮮で育った脱北者が韓国という資本主義経済に馴染むのは容易ではない、
と言うことです。
番組内である女性にフォーカスを当てた形でストーリーが進行する場面があったのですが、
その女性はかなり複雑な境遇の方で、
- 脱北をするために、ブローカーを頼って、中国へ脱北するも人身売買の被害にあい、性産業への従事を余儀なくされる
- 中国では戸籍もなく生活の自由もなく、厳しい状態が続いたが、
- 韓国では戸籍を得て自由な暮らしができるとの情報を得て韓国を目指す
- 韓国への脱北を許可してもらうには中国人富豪との間に子供を儲け中国に置いていくことを条件として出される
- その条件を飲み韓国へ移ったため、中国人には娘を置いてきた
とのことでした。
そのような背景を持つ女性が韓国で婚活をするわけですが、
やはり世の中で大切なのはお金だ、
という考えを持っており、結婚相手にも金銭的な豊かさを求めます。
加えて、そもそも彼女は北朝鮮の親族への送金も続ける必要があり、
特にお金が必要な様子です。
(脱北者がどうやって北朝鮮にお金を送金できるのか?という疑問は残りました。)
やっと見つけた理想の男性
そんな彼女は、
結婚相談所で年収400万円程度ですが、親の資産を合わせると資産6,000万という
好条件な男性を紹介してもらうことに成功します。
しかし、何度目かのデートの際に、
彼女から男性に
「実は北朝鮮への仕送りが必要で、月に自由に使えるお金がどれくらいなの?」
と言う質問をしようとした際に、男性が
「ローンを組んでマンションを買っており、自由に使えるお金はあまりない」
と言います。
それを聞いた彼女は、あからさまな態度で、もう話す気さえ失せて、
その日のデートは終了します。
視聴者の私は、
彼女は、その男性が仕送りできない、お金に余裕がない
と知ったから、単純に興味を無くしただけかな、と思っていたのですが、
彼女がその後、結婚相談所に入れたクレーム内容を聞いて、問題の根深さを知ります。
後日、彼女は結婚相談所にこんな文句を言います。
「資産や年収は公開されているのに、男性が借金していることは何で公開されていないの?そんなの不公平だ」
つまり、北朝鮮で育った彼女の価値観の中には
ローン=借金で、
借金をすると言う行為はかなり卑しい行為というイメージを持っており、
そんな男性との将来を考える事は無理、という結論に至ったということです。
そもそもの思想の違い
普通の資本主義経済の中で育っている私たちからすると、
ローン組むのなんて普通でしょ、
そもそも企業を見渡してみれば銀行から借り入れせずに事業を営んでいる会社なんてあるの?
と言うレベルで借金は一般的な行為なのですが、
生まれ育った環境・価値観の違いから、それを受け入れることが出来ないのです。
私はここで、どちらが優れているみたいな政治的な思想を発信する気はないですが、
自分の信じてきた価値観をその環境に合わせて変えることは難しいことだと思いますし、
脱北女性が資本主義経済に馴染むのは本当に骨が折れることなのだろうなと思いました。
そもそも多くの場合、身近に友人や親族がいる環境でもないでしょうし、
水に馴染むのは時間が掛かるでしょう。
そう考えるとともに自分がこう思う、という押し付けをせず、
多様な価値観がある、ということを再認識する良いきっかけになりました。