昨年、フィリピンに短期の語学留学をしていた当時、
よく使う交通手段と言えば、Grab(グラブ)でした。
前提として、セブ島には地下鉄などの公共交通機関はなく、
ジプニー等は目的地が複雑で乗りこなすのは現地人でも難しいとのこと。
Grabとは
念のためGrab Carとはどのようなサービスかというと、
ライドシェアサービスの一種であり、アプリで自動車(もちろん運転手付き)を配車できるサービスです。
タクシーを呼ぶ代わりに、近くにいるGrabに登録している一般人の運転手を呼びつけて、目的地まで送ってもらうイメージだと言うと分かりやすいかもしれません。
アプリ上ではGrab Taxiというサービスもあり、そちらを選択した場合は、タクシーを呼ぶことも可能で、タクシーの配車機能も持ち合わせています。
日本人の感覚からすると、タクシーに乗るより、一般人の車に乗る方が怖くないか?
という疑問を持たれるかも知れないが、そんなことはないと思っています。
運営会社のGrabへドライバーが登録する際の審査基準が厳しいらしく、
古い車では登録ができなく、経験上、比較的新しい車しか配車されたことはないです。
加えて、サービス品質の悪いドライバーは配車マッチングしにくいため、特に嫌な思いをしたことはないです。
外国人旅行者がこのサービスを活用する大きなメリットは以下の2点だと思っています。
- コミュニケーションが最小限で済む
目的地をアプリの地図上で指定すれば良いので、運転手へ口頭で目的地を伝える手間がないです。かつ、どの車が自分の配車した車かな?という確認は来た車のナンバーワンで確認が可能です。
- 料金決済が効率的
そして何より、事前に目的地までの料金が分かっており、オンライン上から決済が可能なため、現地通貨で料金を支払う手間がない、尚且つぼったくられる心配がないことはかなり心強いです。私の場合、無駄に日本円を現地通貨に両替したくないですし。
Grabはシンガポールの会社(創業はマレーシア)であり、
東南アジア圏を中心に展開しているため、
今後、東南アジアを旅行される際には、活用されることをお勧めします。
(今はこんなご時世ですが、早くコロナウイルス問題が落ち着くことを祈っています。)
ちなみにGrabは東南アジア版のUberであり、
Grab Foodという宅配サービスやGrab Payというキャッシュレスサービスも展開しています。
注)Uberについては日本ではタクシー業界の利権の問題で白タク行為になるライドシェアは展開されていませんが、元々アメリカではUberはライドシェアサービスとして有名です。
と、まぁGrabばかり利用している話を語学学校の先生にしたところ、
一人で出かけるならAngkas(アンカス)というバイクの配車サービスをお勧めされました。
バイク配車のAngkasとは
サービスの内容は上述したGrab Carのバイク版なのですが、
バイクということで値段がさらにお手頃かつ、
バイクは自動車より渋滞に強いので現地の人からするとかなり人気のサービスみたいです。
しかし、如何せん、バイクにほとんど乗ったことがない私は、
異国の地で見知らぬライダーの後部に乗るのは怖く、
サービスを利用するのは遠慮しておきました。
ちなみにAngkasはタガログ語でバイクをヒッチハイクする等、の意味だそうです。
Angkasって、人気のサービスだったな、と懐かしく思っていたのですが、
先ほどJETROのサイトをみると、
フィリピンの陸運統制委員会(LTFRB)は1月20日、バイク配車サービスを2月以降は違法とし、アンカス、ジョイライド、ムーブイットの3社が2019年12月23日から2020年3月23日までの期間で実施している試験運用も中止させると発表した。
安全性の観点から二輪車はあくまで個人の交通手段と位置付けることが適切で、バイク配車サービスを違法として結論付けた
ソース:バイク配車サービスを違法と結論、アンカスなど3社は1月で操業停止へ(フィリピン) | ビジネス短信 - ジェトロ
となんと、違法になっているじゃないですか。
発表内容によると、
法制化が追い付いていない&安全性がまだ確保されていない、
ため、違法と整理して、サービスは停止させます、
という扱いみたいです。
ちなみに、
このAngkasの創業者で最高経営責任者(CEO)はアンジェリン・タム(Angeline Tham)氏という女性なのですが、
昨年時点で37歳、シンガポールのJPモルガンやソフトバンク系のベンチャーキャピタルファンド、Grabシンガポール勤務などを経て、起業されたようです。
彼女はシンガポール人なのですが、フィリピン人との結婚を機にフィリピンでビジネス展開をされている様です。
起業の背景には、マニラの渋滞が非常にひどくて、市民のかなりの時間を無駄にしており、経済的な損失が大きい、これをなんとかできないか、と思ってこのサービスを立ち上げたそうです。
てか、Bloombergには、世界最悪の渋滞に挑む元銀行員とか言って、ただの元銀行員かのように紹介していますが、元副社長だし(Bloombergがヴァイスプレジデントという役職を安易に日本語訳して元副社長と言っていないことを祈ります)、華々しいキャリアを歩んできた人だからただの銀行員ではないですね。
ソース:世界最悪の渋滞に挑む元銀行員-二輪車アプリで市民の時間を取り戻せ - Bloomberg
で、このAngeline Tham氏、結構過激な比喩・発言を好む方で、
昨年の6月には、
「AngkasはSexと同じで、最初は怖いけど、回数を重ねるにつれて楽しくなる」
という旨の発言をして、SNS上で結構な炎上を引き起こし、謝罪する羽目になっています。
ただ、それがあったにも関わらず昨年12月には、
「Angkasのサービスは危険ではない、99.997%という安全性を維持することができており、コンドームよりも安全だ」
と発言されています。
国民性なのか、そういう過激な発言を好む性格の人なのか、は不明なのですが、
安全性をアピールするも結局、サービス停止に追い込まれています。
と、なんやかんや言いましたが、
Tham氏がAngkasを起業したのは2016年であり、
30代前半で起業し、CEOとして活躍されており、その点は非常に尊敬に値します。
若くして起業するというリスクを取る勇気も素晴らしいですし、
なおかつ事業として成功を収めた、という点も素晴らしいと思います。
ビジネス成功のカギは?
「ビジネスチャンスがどこにあるか」については、
やはり常識を疑うということが大事です。
(今回の場合、都市の交通渋滞は仕方ないではない)
尚且つ、既存のビジネス(今回の場合、Grab、Uber)にも着想を得て、
うまく市場のニーズに合わせてローカライズすることが成功のカギになるのかなと思います。
日本にはバイクタクシーのニーズはほとんどないと思いますし、
フィリピンだからこそ、創出された市場だと思っています。
と言うことで、個人的には、このAngkas、私は応援しています。